ガンダム史でもっとも悲惨な部隊『シュラク隊』とは

シュラク隊とは

シュラク隊は、『機動戦士Vガンダム』で主人公のウッソ・エヴィン(以下、ウッソ)が所属するリガ・ミリティアの部隊のひとつで、初代隊長を除く全員が女性であることが大きな特徴です。リガ・ミリティアは、宇宙世紀0152年から0153年にかけてザンスカール帝国軍に対抗するレジスタンス組織になります。

ちなみに『シュラク(shrike)』とは、英語で百舌(モズ)という鳥を意味しており、シュラク隊のマークにも使われています。ザンスカール戦争では女性の活躍が顕著で、リガ・ミリティアのホワイトアーク部隊やザンスカール軍でも女性パイロットが数多く活躍しています。

シュラク隊メンバーの活躍

シュラク隊メンバーは最終的に全員が戦死してしまいます。今回は戦死してしまった順番で、シュラク隊のメンバーを紹介してきます。

①ヘレン・ジャクソン

シュラク隊の実質的なリーダーであったジュンコ・ジェンコ(以下、ジュンコ)は、ヘレンを「シュラク隊に入るべくして入った人だ」と話しています。同じ隊のメンバーであるマヘリア・メリル(以下、マヘリア)とは仲が良い様子が描かれています。

リガ・ミリティアのカミオン隊に合流直後、ベチエン飛行場での戦いでザンスカール軍ピピニーデン隊のトムリアットを撃破しますが、その際に搭乗していたシュラク隊のモビルスーツ『ガンイージ』のコクピットを潰され、シュラク隊の最初の犠牲者となります。

②マヘリア・メリル

マヘリアは交通事故で亡くなった弟の面影を主人公のウッソに感じ、彼に対し姉のように優しく接しています。

ジブラルタル空域では、先に戦死した親友・ヘレンの口紅を使い、頬に戦化粧を施し弔い合戦を挑みます。ウッソを守るためにザンスカール帝国軍のモビルスーツ『トムリアット』を撃破しますが、同時にトムリアットのビームローターで、搭乗していたガンイージのコクピットが損傷し、爆発。これによって戦死してしまいます。

マヘリアの遺体はジブラルタル空港で棺に納められました。シュラク隊で遺体が残ったのはマヘリアだけで、唯一葬儀が行われています。

③ケイト・ブッシュ(以下、ケイト)

ケイトは家族を事故で亡くした過去があり、ウッソとシャクティの関係を羨ましがる様子が描かれています。

ジブラルタル空域での戦闘でザンスカール帝国軍のモビルスーツ『メッメドーザ』によって、地球と宇宙を輸送するために必要なマスドライバーを一部損壊してしまいます。ケイトはマスドライバーを支えようとしますが、その隙を突いたメッメドーザによってコクピットをビームサーベルで貫かれ、戦死します。彼女の意思を受け継ぐように、マスドライバーを支えていたガンイージは、そのまま残りました。

④ジュンコ・ジェンコ

シュラク隊事実上のリーダーで、戦闘での指揮はジュンコが担っていました。メンバーからも「姉さん」と慕われており、面倒見が良くチームをまとめるに相応しい人柄でした。ウッソに対してもモビルスーツの操縦技術を見習うだけでなく、人として支えになる存在になっていました。

隊長のオリファー・イノエ(以下、オリファー)を慕っていて、オリファーと恋愛関係にあったリガ・ミリティアのパイロットのマーベット・フィンガーハット(以下、マーベット)とは気まずい関係にありましたが、後に和解しています。

宇宙に上がってからは、死に急ぐような言動…俗に言う『死亡フラグ』を立てるようなことを口にしていました。

ザンスカール帝国に潜入したウッソの脱出を助けるために、モビルスーツ『ガンブラスター』で出撃しますが、リガ・ミリティアからザンスカール帝国軍に造反したカテジナ・ルース(以下、カテジナ)が搭乗するモビルスーツ『リグ・シャッコー』の攻撃を受け負傷してしまいます。

直後のビッグキャノン攻防戦中にザンスカール帝国軍のクロノクル・アシャー(以下、クロノクル)が仕掛けた時限爆弾の解除に向かいますが解除に失敗してしまい、ウッソの目の前で爆死しました。

⑤ペギー・リー

シュラク隊がカミオン隊と合流した頃はウッソとの関係は希薄でしたが、徐々にその距離を縮めていきます。戦死する直前にはウッソに「私達の分まで生きろ」と言い残しています。

ウッソをサポートするためにガンイージで出撃した際、ザンスカール帝国軍モビルスーツ『コンティオ』と交戦、機体と自身が負傷してしまいます。ウッソ、マーベットを庇う為に負傷した身体でガンイージに再搭乗、クロノクルの乗るコンティオに取りつきますが、力及ばず戦死してしまいます。

⑥オリファー・イノエ

シュラク隊の初代隊長で、シュラク隊の唯一の男性パイロットです。ウッソ達がいたカミオン隊に最初に合流したメンバーになります。シュラク隊やリガ・ミリティアのパイロットの、フォローと育成を担っており、VガンダムやVガンダムヘキサ、V2ガンダムにも搭乗しています。

マーベットとは恋人関係で、敵地であるマケドニアコロニーでリガ・ミリティアが捕まった際にプロポーズ、看守の目を逸らすためという名目もありましたが、挙式をしました。後にマーベットは子どもを授かります。

しかし、間もなくして月面からザンスカール帝国軍モトラッド艦隊の発進を阻止するためにV2ガンダムのボトムパーツをウッソに預け、自身はV2コアファイターでザンスカール帝国軍戦艦アドラステアに特攻し、戦死してしまいます。

⑦コニー・フランシス(以下、コニー)

コニーは初期に編成されたシュラク隊で最終決戦まで生き残ったメンバーです。オリファーが戦死した後に他のメンバーから諭されたこともあり、シュラク隊の二代目リーダーとなりました。部隊の最前線で陣頭指揮を執ることも多く、ウッソをはじめ年少者が多かったホワイトアーク隊のメンバーのサポート役も担っていました。

最終決戦のエンジェル・ハイロゥ攻防戦ではウッソを手助けしようとしてクロノクルが搭乗するリグ・コンティオとの戦闘に介入を試みますが、カテジナが搭乗するモビルスーツ『ゴトラタン』により「クロノクルとウッソの戦いに他人を入れはしない」と、搭乗していたVガンダムヘキサを撃破され戦死します。コニーの戦死により、初期のシュラク隊は全滅してしまいました。

シュラク隊に追加補充されたメンバーの活躍

戦況が激しくなるにつれて、シュラク隊のメンバーも次々と命を落としていき、それに伴ってシュラク隊に補充されたメンバーを紹介します。

⑧ユカ・マイラス

地球連邦軍のバグレ隊に所属していましたが、部隊の全滅により、リガ・ミリティアに参加しました。ウッソ達が初めて宇宙に上がった頃に合流しています。ユカが所属した部隊は全て全滅していたことから、内部からも「死神」の異名で呼ばれていましたが、ユカ本人はそれを嫌っています。

コニーと共に部隊の指揮役を担うこともありましたが、最終決戦のエンジェル・ハイロゥ攻防戦でカテジナが乗るゴトラタンからの直撃を受け、戦死します。

最終決戦直前に「マーベットが私たちの子供を産んでくれる事を、先に逝った連中に教えに行かなければいけない」と話しており、戦死する覚悟で最終決戦に挑んだことが分かります。

⑨フランチェスカ・オハラ

フランチェスカ・オハラ(以下、フラニー)は、月面で合流します。フラニーはウッソに気があるような言動をすることが度々ありましたが、フラニーはウッソとの関係は「パイロット同士の仁義だ」と話していました。また、戦いのなかで、ウッソのパイロットの素質は特別なものだと実感しています。後にシュラク隊に合流したミリエラ・カタン(以下、ミリエラ)とは仲がいい様子も描かれています。

最終決戦のエンジェル・ハイロゥ攻防戦でエンジェル・ハイロゥを攻撃し始めたカテジナが乗るゴトラタンの様子を見て、味方に寝返ったと思い込んでしまい、不用意に近づいたところをゴドラタンのメガ・ビームキャノンの砲身で振り払われてしまい、搭乗していたVガンダムヘキサが撃破、戦死します。

ことのき、カテジナからは「とち狂ってお友達にでもなりにきたのかい」と言葉を吐き捨てられていました。

⑩ミリエラ・カタン

最終決戦前に最後に合流したメンバーでフラニーとは親友です。エンジェル・ハイロゥ攻防戦でカテジナが乗るゴトラタンにフラニーが撃墜されたのを機に、フラニーと同じVガンダムヘキサで挑もうとしますが、ビームカッターでコクピットを貫かれて戦士してしまいます。

多くの女性が戦った戦争

『機動戦士Vガンダム』では女性の戦いが特に多く描かれています。後半になると女性同士の戦いも多くなり、女性特有の世界観や母性を感じる言動も多くなってくるのが『機動戦士Vガンダム』の特徴です。

また、リガ・ミリティアのベテランパイロットとシュラク隊がウッソやホワイトアーク隊の年少者や子どもを授かったマーベット達に宇宙世紀の次世代を託そうと戦っているのも印象的です。

宇宙世紀ガンダムシリーズは『機動戦士Vガンダム』で一つの区切りを迎えることになりますが、シュラク隊での女性の活躍が現代社会に生きる私達の社会問題の一つである「女性の社会進出」に一石を投じているようにも見えます。気になった方はシュラク隊の活躍を改めてアニメで見返してみてください。