ガンダムシリーズでは定番?主人公機の乗り換えとその影響

機動戦士ガンダム作品では、主人公が同じ機体に最後まで乗り続けることは実は稀である。そこで今回は、感動的に描かれ、その後の物語はもちろん、主人公の人格形成にすら関わってくる、後継機への乗り換えの一部についてご紹介いたします。

【機動戦士Zガンダム】第21話「ゼータの鼓動」

パイロット:カミーユ・ビダン
【前】ガンダムMk-Ⅱ → 【後】Zガンダム

最初にZガンダムに乗ったのは主人公ではない!?

Zガンダムはこの話の途中で登場するのだが、実はこの回では主人公カミーユ・ビダンは前搭乗機のガンダムMk-Ⅱで戦っており、Zガンダムには最初アポリーが搭乗している。運んできた、というのが理由だそうだが、それにしても主人公機に最初に乗って戦うのが主人公ではないというのは、なんとも斬新な登場の仕方である。アポリーが操っている時点でガブスレイを退ける戦果をあげ、Zガンダムの性能の良さが際立っている。

この話ではZガンダムへカミーユは搭乗せず、次話でレクチャーを受けてしれっと搭乗している。また、ガンダムMk-Ⅱはこの回で一度やられたが、完全に壊れたわけではなく、次話で早々に復活。以降もエマ・シーンなどの搭乗機として現役で残り続ける。

初の変形するガンダム、それ以外にも多くの特徴が!

RXシリーズとしてではなく、新たなZ計画として開発されたZガンダムは初の可変ガンダムとなり、ティターンズにも多くいる可変機相手にその機能を遺憾なく発揮する。それ以上に、ニュータイプであるカミーユに影響を与えたバイオセンサー機能は、パプテマス・シロッコとの最後の戦いにおいて、本来の性能以上の力を見せることになる。Zガンダムへ乗り換えていなければ、最強のニュータイプと呼ばれたカミーユと言えども、強敵シロッコには勝てなかったのではないだろうか。

①主人公機乗り換えの原点

前作の機動戦士ガンダムでは、アムロ・レイの搭乗機はずっとRX-78-2ガンダムであり、途中何度か別機体へ乗ってはいるものの、乗り換えは行われていない。そういう意味では、このZガンダムへの乗り換えが、ガンダムシリーズ初の乗り換えとなっている。ただ、その乗り換えはタイトルから約束されたようなものなのかもしれない。

タイトルは「機動戦士Zガンダム」なのに、その「Zガンダム」が全く出てこない。第21話までは「機動戦士ガンダムMk-Ⅱ」である。これまでのロボットものには絶対にありえなかったこの展開は、当時の視聴者に新しいワクワク感を提供した。しかし、Zガンダム以降、これはガンダム作品での通説となっていくことも忘れてはならない。

②色んなパイロットが操る珍しい主人公機

カミーユがZガンダムを降りた後、次作の機動戦士ガンダムZZでジュドー・アーシタ、ルー・ルカなども搭乗している。他にも主人公以外が主人公機に乗るパターンはいくつかあるが、長い宇宙世紀の歴史の中で、これだけ多くの人が乗った主人公機はZガンダムだけだろう。ただ、後にも先にも、Zガンダムの性能をフルに発揮したのはカミーユだけであると断言できる。

③人の人生を変える機体?

前述したように、様々な人物がコックピットに乗る同機体だが、この機体に乗った人間は、その後、良くも悪くも大きな人生の転機を迎えることになっている。アポリーは人生の終わりを迎え、カミーユもまた自身の精神を壊すことになる。ジュドーは大きな戦いへ赴くきっかけを作ることとなり、ルーもその後ジュドーと共に木星へと誘われた。

人の人生を変えてしまうほどの力を持った機体。逆襲のシャア以前、アムロもこの機体を搭乗機として探していて、性能を近づけるMSとしてリ・ガズィを作らせたという話すらある。そういう意味でも、Zガンダムは伝説を作っていて、ガンダムの鏡とも言える機体である。

【機動武闘伝Gガンダム】第24話「新たなる輝き!ゴッドガンダム誕生」

パイロット:ドモン・カッシュ
【前】シャイニングガンダム → 【後】ゴッドガンダム

シャイニングガンダムが再起不能に

死闘の末、デビルガンダムに完全勝利したかに見えたドモン・カッシュのシャイニングガンダムだが、執念の鬼と化した東方不敗マスターアジア操るマスターガンダムによりエネルギーが底をつき、再起不能となってしまう。

ドモンはシャイニングガンダムを捨て、ギアナ高地に降り立ったゴッドガンダムへと走る。シャイニングガンダムはその走るドモンを庇い、致命的な一撃を受けてしまう。だが、ドモンが必死でたどり着いたゴッドガンダムはなぜか起動せず、絶体絶命に。

ドモンとレインとの絆が生んだ、感動的な乗り換えシーン

絶体絶命のその時、パワーを失ったはずのシャイニングガンダムがレイン・ミカムラの遠隔操作により動き出す。ドモンとレイン、ゴッドとシャイニングの手が触れ合った時、シャイニングガンダムのデータを受け継いだゴッドガンダムが完全起動する。

力尽きたシャイニングガンダムを抱えて起動したゴッドガンダムは、再生したマスターガンダムを一蹴し、ガンダムファイトの決勝大会が行われるネオ香港へと向かう。このとき取り残されたシャイニングガンダムの絵は、感動的である。

会場へと急ぐゴッドガンダムは、地球周辺に張り巡らされたロープを使うという少し強引な方法ではあったものの、無事にネオ香港へたどり着く。その後のガンダムファイト決勝大会においても圧倒的な強さを見せ続けた。

復活したデビルガンダムなどとの死闘を潜り抜けるゴッドガンダムとドモン・カッシュだったが、シャイニングガンダムからの乗り継ぎがなければ、そもそもドモンはネオ香港へたどり着けず、決勝大会に出られなかっただろう。もしそうなっていたらと考えると、ゴッドガンダムをネオ香港ではなく、ギアナ高地へ送ったミカムラ博士の選択の大きさがうかがえる。Gガンダムが描く人との絆が未来を描く、代表格とも言える熱い乗り換えシーンとなっている。

決勝大会用にネオジャパンが作ったゴッドガンダム

設定上、ゴッドガンダムはネオジャパンが決勝大会用に作ったガンダムだとある。それ自体は別に不思議なことは感じないのだが、面白いことに他の各国出場ガンダムは決勝大会用に機体を改修することはあっても、ネオジャパンのように機体ごと代えてはいない。

たしかに、スポーツなどを見ても「これまで愛用してきた道具を決勝で取り替える」ということは非常に稀であることから、そもそもシャイニングガンダムはゴッドガンダムを作る過程でのプロトタイプで、決勝直前までゴッドガンダムの開発が遅れていたと考えるのが妥当か。仮にそうだったとしても、テストもせず、いきなり実戦投入するとは、ネオジャパンもかなり大きな賭けだったように思う。

大人になったドモン?

ゴッドガンダムへの乗り換え以降、シャイニングに乗って旅をしていた時に比べると、ドモンがどこか大人っぽくなっている印象がある。シャイニングとの別れを経て、少し成長しているのだろうかと思うと、シャイニングガンダムの犠牲はやはり無駄ではなかったなと思える。シャイニングに乗っていた時が子供っぽすぎたという説もあるが…

【機動戦士ガンダムSEED】PHASE-34「まなざしの先」

パイロット:キラ・ヤマト
【前】ストライクガンダム → 【後】フリーダムガンダムへ

親友との激闘の末、戦う意味を悟った主人公

前機ストライクガンダムが大破する原因ともなった、親友アスラン・ザラが乗るイージスガンダムとの激闘の末、主人公キラ・ヤマトは敵国ザフトの姫、ラクス・クラインに保護される。

親友と生死をかけた戦いを経て、戦場へ戻ることを躊躇するキラ。しかし、ザフトの地球連合軍掃討作戦、オペレーション・スピットブレイクの発動と、それに対する連合軍の卑劣な策略を見て、自分が何と戦うべきなのか、それに気づいたキラ・ヤマトは、地球で戦うアークエンジェルの仲間を救うために戦場に戻る決意をする。

敵となるザフトが開発したガンダム

その想いに応えるために、ラクス・クラインは裏切りの一手を取る。彼女のとてもスムーズな手引きにより、フリーダムガンダムはキラの愛機となる。同機体は、元々は敵対していたザフト軍が開発した最新鋭の機体であり、ザフトにとっては痛すぎる奪取事件となった。彼女はこれに懲りず、フリーダムの専用母艦であるエターナルも奪取するなど、恐ろしいほどの盗人根性を発揮する。

そもそも最初にガンダムを作ったのは…?

ただ、そもそもフリーダムガンダムの設計には、連合軍から奪った機体「GAT-X」シリーズの概念が数多く取り入れられており、奪った機体データで作ったと言っても過言ではない機体である。そうすると、フリーダムガンダムを奪われたとしても、奪い返されただけで、何も文句は言えなかったのではないか、とも考えられる。

結果的にキラとフリーダムは、その連合の味方にもならなかったが、これも元を辿ればGAT-Xシリーズの開発を主導したオーブ首長国連合の所属機体とするならば、連合から見ても、やはりそもそも論である。

2年経っても無敵

次話「舞い降りる剣」にて、見事にアークエンジェルの窮地を救い、その後も鬼神の如き活躍を見せるフリーダムガンダム。「ニュートロンジャマーキャンセラー」、使用が不可能とされた核で動くガンダムという設定で、これまでのMSとは桁違いの性能差を見せつける。

その設定上、2年後の世界を描いた続編、「機動戦士ガンダムSEED Destiny」でも別格の強さを見せつける。物語中盤で仲間を庇う形で、シン・アスカのインパルスガンダムに撃墜されるまで、無敵と言っても過言ではない活躍を見せ続けた。

もちろん、最高のコーディネイターと呼ばれたキラが操っていたから、というのもあるが、2年経ってまでザフトを苦しめていると思うと、当時奪取を手引きしたラクス・クラインの罪は、ザフトから見れば想像以上に重いものだったのではないだろうか。

キラ・ヤマトの性格を変えた機体?

前機ストライクガンダムに乗っていた時と違い、フリーダムガンダムに乗ってからというもの、キラはどこか物事を悟っているような、芯を持った人間へと変わっていく。もちろん、ストーリーの転機で「主人公の考えが変わったから乗り換えることができた機体」だからというのもあるが、その後のキラの人格に大きな影響を与えたことは間違いない。やはり、己の想いを成し遂げられる力というのは、どの時代も人を変えるためには必要ということなのだろうか。

【機動戦士ガンダム00 セカンドシーズン】PHASE-2「ツインドライヴ」

パイロット:刹那・F・セイエイ
【前】ガンダムエクシア → 【後】ダブルオーガンダム

ボロボロのエクシアから、未完成の機体へ

直前の戦いでボロボロになりながらも、なんとか自らの力でガンダムエクシアを改修しながら4年という月日を戦い続ける主人公、刹那・F・セイエイだったが、ソレスタルビーイングとの再合流の際に、エクシアが大破。新機体であるダブルオーガンダムへ搭乗することとなる。

ただ、このダブルオーガンダム、実はこの時まだ完成していない。正確には、見た目上は完成しているが、動かないのである。ツインドライヴシステムという、この時代のガンダムを動かす素であるGN粒子を2乗化するシステムの安定に手間取っていたのである。刹那はエクシアを失った1話最後からこの2話のクライマックスまで搭乗機体を持たず、自力でソレスタルビーイングの人員を集めていく。

迫り来るアロウズのMSの中、奇跡の起動へ

そんな刹那が、母艦プトレマイオスへ帰還するとき、アロウズのMSに襲われる。迫り来るアロウズのMSに対処すべく、刹那は未完成のダブルオーガンダムを発進させようとする。安定起動に成功しておらず、何かが起こっては困る整備士イアン・バスティに「トランザムは使うな」と言われているにも関わらず、何の躊躇もなくトランザムシステムを起動する刹那。しかし、それでもダブルオーは起動しない。

愛機エクシアと、憧れのOガンダムのGNドライヴを積んだ機体。

ダブルオーガンダムの起動を願う刹那は、コックピットの中で自らの想いを口にする。

「目覚めてくれ、ダブルオー。ここには、Oガンダムと、エクシアと、俺がいる!!」

その瞬間、ダブルオーの粒子は安定し、奇跡の起動を果たす。愛機であったエクシアと、幼い自分を救ってくれたOガンダム、2つの機体の動力であるGNドライヴを積んだダブルオーガンダムは、颯爽と飛び出す。その初陣は、1つのGNドライヴで動く従来の最強形であるアロウズのMS二機を圧倒した。この起動シーンで、胸をアツくした視聴者は多いのではないだろうか。

ダブルオーガンダムと、刹那の成長

ダブルオーガンダム、その後の発展期であるダブルオーライザーに搭乗したあとの刹那は鬼神の如き活躍を見せるわけだが、特筆すべきはファーストシーズンの刹那との違いである。猪突猛進で危なっかしかったファーストシーズンの戦い方と違い、ダブルオーライザーに乗った刹那は、サポート機であるオーライザーにて同乗する沙慈・クロスロードや、他のガンダムマイスターに指示を出すなど、ソレスタルビーイングを引っ張っていく存在となり、まさしく著しい成長を遂げていく。

ダブルオーの力も借りて、人間離れした力を手に入れていく刹那だが、わがままで聞き分けのない子供から、そのわがままを現実へ変えていく力を持とうと奮闘する大人へなっていく刹那の成長は、頼もしい反面、少し遠くへ行ってしまうような寂しさも感じる。

最終話で、まさかの逆乗り換え!?

最終決戦でリボンズ・アルマークの搭乗するリボーンズガンダムとの激闘の末、ダブルオーガンダムは大破してしまう。対するリボーンズガンダムも、ダブルオーからの攻撃で中破しており、リボンズはダブルオーから奪ったGNドライヴを使い、戦場に漂流していた前愛機のOガンダムへと搭乗すると、刹那にとどめを刺すべく戦いへと戻る。

ダブルオーを失い、絶体絶命の刹那のもとに、戦術予報士のスメラギ・李・ノリエガが送り込んだガンダムエクシアが装いを新たに、リペアⅡとなって舞い降りる。最終話でかつての愛機に逆乗り換えするシーンは、過去作でも例を見ない激アツ展開となった。

まとめ

時代を経るごとに、演出が進化していき、その乗り換え後の物語もドラマチックに描かれている。ただ、Zガンダムのようなどこか地味に見える乗り換えもまた、実はその後のキャラクターの人生に大きな変化を与えている。

主人公が機体を乗り換える時、そこには必ずドラマが生まれる。今後の作品でもどんな乗り換えがどんなドラマを生み出すのか、期待したい。